2023年7月に読んだ本【短評】

当ページのリンクには広告が含まれています。
2023年7月に読んだ本の短評

読んだ本は逐次ブログで紹介しているけれど、割とさらりと読めてしまった本や、紹介の切り口が難しい本、本のわずかなネタバレも致命的になる本など、記事を書きあぐねるものも多々あります。そんな本が山になって、「記事にする」リストを圧迫している。

リスト消化を試みる間にも本を読むので、リストの題目は増えることはあれど減る気配は一向にありません。流石にこのままではタスクの山に押しつぶされてしまう。なので、ある程度まとめて簡潔に紹介し、リスト消化をはかろうと思います。

目次

センス・オブ・シェイム(酒井順子|文藝春秋)

エッセイスト・酒井順子氏による「恥」がテーマのエッセイ。

『SNSと中年』という項でおじさん構文やFacebookの自慢合戦を取り上げ、分析と批評により他人の恥を鮮やかに切り捨てたかと思いきや、返す刀で自分ごととしての 『自意識からくる恥』 に切り込み、時代・年代間での『恥』の感覚の違いを浮き彫りにしていく。

日本の行動規範は『恥』の文化だというけれど、その恥ずかしいという感覚は「人からどう見られるか」、言い換えると「他者との関係性」の中でのみ生まれるものであると、著者は冷静に分析しています。確かに、人間、自分一人でいるときは恥なんて感じない。恥について考えることは、自分と他者との境界線を考えることでもあるのでしょう。

SNS時代になり、この「自分と他者との境界線」は以前よりも薄くなっています。今や家から一歩も出なかったとしても、手元のスマホを介せば、そこに他人の目がある。自己表現が求められ、画像や動画による私生活のシェアが当たり前になった文化で、今後の「恥」の感覚はどう変わっていくのか。そんなことを考えさせられる一冊。

ストーンヘンジ(山田 英春|筑摩書房)

ロマン溢れるイギリスの遺跡・ストーンヘンジについて、その構造や歴史を解説する本。

写真と図解が多く、説明も丁寧で読みやすいうえ、「諸説ある」ものはちゃんと複数の説を取り上げている、学術的にも信頼がおける内容でした。オカルトや伝承の要素までちゃんと取り上げているあたり懐が深いと感じます。

そういえば、私がストーンヘンジを始めて知ったのは、20年以上前に読んだ、やぶうち優先生の「KAREN」という少女漫画でした。19世紀末ロンドンが舞台で、治癒の力をもった少女・カレンが主人公。彼女が自分の出自の謎を解き明かすためにストーンヘンジに向かうシーンがあったはず。物語はうろ覚えだけど、ストーンヘンジが描かれたコマだけは記憶に残っています。

結構な時を経て、ストーンヘンジに少しだけ近づけたのが嬉しい。

Another side of 辻村深月(KADOKAWA)

「辻村深月ガイドブック」とでもいうべき本。
作品解説インタビュー、対談、書き下ろし短編、著名人からの様々な「辻村深月評」とコンテンツが山盛りで、どこを開いても密度が高い一冊です。

特に楽しめたのが、文筆家たちによる「辻村深月評」。辻村作品の魅力はどこにあるのか、本人はどういった人なのか。エッセイ、対談、一言コメントと、いろんな作家が形式も様々に「辻村深月」を綴っています。創作論や世界観に関する話題も多く、物書きの端くれとして読み応えのある内容でした。

辻村作品はデビュー作『冷たい校舎の時は止まる』を筆頭に、「ホワイダニット (Why done it ?|犯人の動機が主眼) のミステリー」のイメージが根強いと思います。しかし近年の作品を見てみると、ホラー、仕事、そして青春と、バリエーション豊か。名前に冠した月のように、見る場所によってガラリと印象が変わる。そんな辻村作品の魅力を愛でられる本でした。

宗教のレトリック(中村 圭志 |トランスビュー)

怪しい表紙とタイトルですが、真面目に宗教におけるレトリックの使われ方について論じた本。

本書では仏教・キリスト教・イスラム教の世界三大宗教を中心に、教義や神話に用いられているレトリック(修辞法)について考察しています。

中心となるのは隠喩(メタファー)換喩(メトミニー)提喩(シネクドキ)。それぞれ、言葉の類似性概念の隣接重要な要素に注目した言い換えの技法です。たとえば、ブッダ(=目覚めた人)もキリスト(=油を注がれた者=メシア)も提喩によるネーミングと分類されます。

本書を読むと、宗教において、いかに「わかりやすさ」が重視されているかに気付かされます。複雑な概念や高次の思想は、とにかく「感覚で、なんとなくわかった気になれる」ように、身近なものに例えたり、徹底的に強調されたりする。論理ではなく、文化に馴染むのが宗教を広める上で一番重要なのでしょう。とても興味深い内容でした。

最後に

ふう。これで多少は「読んだ本リスト」内の本の紹介を進められました。

まだまだ書評を書けていない本が山積みですが、なるべく早いうちに記事にする予定です。時間が経つと、本から汲み取ったものがどんどん沈澱して、上澄みが薄くなっていってしまうから。

よかったらシェアしてね!
  • URLをコピーしました!

コメント

コメントする

目次