2024年上半期に読んだおすすめ本5選

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2024年上半期に読んだおすすめ本5選

今期は22冊の本を読みました。だいたい1-2週間に1冊くらいのペースですが、たくさん本を読んだ月とほぼ読んでない月にパッキリ分かれていた印象です。

2024年上半期に読んだおすすめ本 読書量データ
去年より読んだ本の冊数は少なめ

その中から特に面白かったものを5冊ピックアップして紹介します。

目次

四国辺土

高知に帰省した時、地元の図書館で読んだ本。遍路道と部落の関係を掘り下げるルポルタージュであり、お遍路にまつわる著者の体験を綴った紀行文でもあります。

四国といえば八十八ヶ所のお寺を巡る『歩き遍路』が有名です。今でこそルート上の宿や食事処なども充実していますが、伝統的には、地域住民が巡礼者に食べ物などを振舞う『お接待』という文化があります。この『お接待』ありきの遍路、ものを乞いながらの巡礼を『へんど』と呼ぶそうです。かつては「へんど」が一般的だったらしいのですが、時代が下るにつれ差別の意味を含むように転じていったのだとか。

著者は、睡眠薬依存からのリハビリを兼ねて四国遍路へきた際に『へんど』を知り、「自分はちょっとした悲しい話を乞う『へんど』になろう」と考えました。そして各地で話を聞くうち、四国の同和地区(部落 / 路地)は遍路道沿いにあることを知ります。

ルポルタージュとしての情報密度、地域住民やへんど仲間の人生模様、著者の健康状態と心情の変化、と、いずれも大変内容が濃く引き込まれる一冊でした。

フリースタイル言語学

『ゆる言語学ラジオ』というYouTube / Podcast番組で知った言語学者の川原愛先生。その知性と個性(と趣味)が全面に出たオモシロ言語学よみものです。

内容としては、エッセイ調のコラム集。「物語を読みながら音声学を学べたら楽しいんじゃないか」との思想で執筆されていて、『ゆる言語学ラジオ』で取り上げられたようなキャッチーなネタが、深く掘り下げて語られています。

キャッチーなネタの例)
・メイドさんのキャラと名前の分析(ツン-阻害音/萌え-共鳴音)
・プリキュアの名前分析(両唇音:p,m,b で始まるキャラが28/59)
・ポケモンの名前分析(濁点や発音時の口腔内の大きさ、名前の長さと、ポケモンの大きさ・強さのイメージが連動する)

川原先生は経歴や各種メディア作品を見るだけでもわかる程、バケモノ並みに有能でバイタリティ溢れる方なのですが、これほどの人でもSNSのクソリプで落ち込んだりするんだな、とか。憧れの人のコメントを心の支えにしたりするんだな、とか。本書を読むと想像以上に溢れた人間らしさの虜になってしまいます。

Savoir&Faire 土

建築・技術・芸術の観点から、「土」について論じた骨太な本。

⠀土壁から工業セラミック、陶芸。土壌成分に化学組成。心理的効果。歴史的建築から最先端のファインセラミックまで、土という素材が文化・技術にどう影響してきたか網羅的に語られています。

「土」が示すものは幅広く、成分だけに着目しても、有機物・粘土・陶土・シリカ・カオリンなど、種々の成分を包含しています。それらがさらに、農業や建築、日用品や芸術といった全く違う分野で使われているのだから、網羅しようとしたら内容もページも分厚くなるのは必然。

海外情報ベースの翻訳本かと思いきや、日本国内の土壌や技術、陶芸、美術表現にフィーチャーしています。

なれのはて

一枚の不思議な絵画の謎を巡るミステリー小説。第170回直木賞候補作品。

テレビ局報道部からイベント事業部へ転属になった主人公は、世話役になった後輩と共に、後輩の所有する一枚の絵画を主題とした展覧会を企画することになります。作者とされるイサム・イノマタは、一切の情報がない謎の画家。展覧会の収益を見込むには、この絵画の著作権が生きているかどうか……つまり、作者の死亡日が鍵になります。企画のためにイサム・イノマタの情報を追ううち、二人は秋田県で石油企業を取り仕切るある一族と、暗い水中に沈められた業へと辿りつきます。

芸能関連に疎いので、著者の加藤シゲアキ氏がNEWSのメンバーだということにこの記事を書いて初めて知りました。うそ、多才がすぎるでしょ。複雑なテーマをまとめ上げる筆力、複雑に絡みあう人間関係、緻密な描写。アイドルとしての肩書きは一切関係なく、文芸としての質が高い作品でした。

みどりいせき

主人公の思考と感覚を脳内に直接流し込まれるような、独特の文体が印象的な小説。地の文が主人公の心情・思考に直結していて、「バイブス」としか呼べない独特のリズム感を生んでいます。文章に芸が光る、まさに「文芸」という感じの作品。

学校に馴染めず、でも不登校にもなれない。そんな無気力な男子高校生・桃瀬翠は、クラスの居心地の悪さから逃げ出した先で、よくわからないままに薬物売買の手伝いを始めます。

身も蓋もない言い方をしてしまうと、本作は「考えること、決定することをサボり続けた青年がずるずると破滅に向かっていく話」です。しかし、よるべのなかった主人公と仕事仲間との間には確かな帰属意識と安心感が生まれて、曲がりなりにも主人公は救われていきます。

「道」を踏み外しているのだけれど、そこでしか救われなかったであろう主人公の姿を描いた、成長譚であり破滅譚です。

さいごに

今期は新刊を中心に手広いジャンルの本を読みました。
読書量が去年よりも減ってしまっていますが、その分面白い本をたくさん読むことができたように思います。

ただ、紙の書籍はどうしても読書時間・タイミングが限られてしまうので、最近は、別のことをしながら聞き流せるオーディブルが気になっています。

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