初心者がセパレート式自作キーボード・Lily58 Pro を作ってみた

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私は元々市販のメカニカルキーボードを愛用していたんですが、手が内を向くのでどうしても肩が凝るんですよね。その対策のために左右分離型キーボードについて調べているうち、自作キーボード界隈にたどり着きました

ないのなら 作ってしまえ キーボード
と、いうことで

機会工作経験ゼロ、はんだづけは中学の技術の授業以来の素人が自作キーボードを組み立てた記録を公開します。

機会工作初心者だけど自作キーボードに興味がある方の参考になれば幸いです。

目次

Lily58 Pro:セパレート型の入門向けキット

キットは遊舎工房さんで購入しました。

特徴

  • 左右分離型 (セパレート式)
  • カラムスタッガード配列 (エルゴノミクス)
  • Fキー列が無い60%キーボード
  • ソケット式でキースイッチが変更可能
  • MXスイッチとChocスイッチの両方に対応

キットの中身は写真の通り。
各パーツは多少余裕を持った数が同梱されていました。

自作キーボード・Lily58 Pro:同梱品

Lily58 Proを選んだ理由

下記の点を重視して、かつ情報の多いものを選んだためです。

  • 左右分離型
  • キーは多め (数字列はほしい)
  • でもなるべくコンパクト

キーが格子状に並んでいるカラムスタッガード配列を選んだのは、ノーマルな配列のものよりスッキリしたコンパクトなデザインが多かったから。見た目重視で選びましたが、慣れれば一般的なキーボードより打ちやすい気がします。

また、初めての自作なのである程度馴染みのあるキー数を確保したいな、ということで数字列のあるものを選択。

Ergoシリーズと最後まで迷ったのですが、最終的にフィーリングでLily 58に決めました。キーが多すぎても持て余しそうだったのと、OLEDディスプレイにロマンを感じたんだと思います。

Lily 58にはProと Lightの2バージョンがあり、差はスイッチソケットの有無。色々スイッチの付け替えを試してみたかったのでProにしました。

キット以外に必要なもの

キットとは別に以下のものを購入しました。

自作キーボード・Lily58 Pro:別途購入品
  • キースイッチ
  • キーキャップ
  • はんだごてとはんだ
  • TRRSケーブルとマイクロUSB
  • 精密ドライバー(+)

はんだごてとはんだ
推奨されていた温度調整機能つきのものを購入。

狭い自室での制作なので鉛フリーにしたのですが、有鉛のものより溶けにくく広がりにくいそうです。確かに若干の扱いにくさを感じました。

TRRSケーブルとマイクロUSB
キーボードを左右で繋いだりパソコンに繋いだりするやつです。ホワイトで統一しました。

それ以外にあると便利だったもの

・エポキシ接着剤
・ピンセット (曲)
・マスキングテープ


キースイッチはspeed軸を選択(ピンク、シルバー)

指が貧弱なのでとにかく軽いスイッチを求めた結果、Kailhのspeed軸を選びました。

以前使用していたキーボードはリニアな赤軸。押した感のなさにミスタイプが増えたので、今回はクリッキーなピンク軸を選択しました。使ってみてうるさかった時のための保険として、リニアのシルバー軸も少量購入。

最終的にメインのキーはピンク、ファンクションキーはシルバーに落ち着きました。

キーキャップは無刻印の白に

なるべく背が低いフラットなものを求めて、プロファイルはDSAを選択。

刻印ありのおしゃれなデザインを探していたのですが、良さそうなのが在庫切れだったのでコスト優先で無刻印にしました。

最初は困惑しましたが、ブラインドタッチならどうせキーは見ないので問題ありません。結果的にホワイトで統一できて気に入っています。

キーボードの組み立て

公式のビルドガイドに沿って進めていきます。
初心者でもこれをよく読んで進めれば基本的に問題ありませんでした。

怒涛のはんだづけ

予備はんだ→パーツの片側を固定→反対側にもはんだ付け
の順で取り付けていきます。

まずはダイオード取り付けのための予備はんだ。

事前に取り付け部分の片側だけにはんだを盛ることらしいです。初めての作業でしたが、20個も盛り続ければ慣れてきました。

予備はんだがおわったら、ダイオードをバラして一つ一つはんだ付け。

自作キーボード・Lily58 Pro:ダイオードはんだ付け

サイズが数 mm程度なので、無くさないよう神経をつかいます。

私は割と器用な方ですが、それでも手が震えて何回かダイオードを吹っ飛ばしました。なるほど、これは予備ハンダがないと取り付けは無理ですね。作業箇所が見やすい曲がりピンセットが活躍しました。

続いてソケットを取り付け。

こちらも予備ハンダをしてから取り付けていきます。先ほどよりサイズが大きいのでかなり楽です。

勢いに乗ってTRRSケーブルのソケットリセット用スイッチのはんだ付けまで進めます。

Pro Microの補強と取り付け

続いてPro Microの取り付けです。

Pro Microは端子が弱く、USB抜き差しの際にもげやすいとのことなのでエポキシ系接着剤で補強しました。変なところについても困るので、両サイドやや控えめに塗っています。

自作キーボード・Lily58 Pro:Pro Micro補強

Pro MicroをPCBに乗せる前に、ジャンパ端子をはんだ付け。

これによって基盤上の回路を繋げているようです。どこが何と繋がっているかも正直理解できていませんが、とりあえず繋げます。

あわせてOLED用のコネクタを取り付けました。

我ながら酷いはんだです。ぼろぼろ。

Pro Microにコンスルー(スプリングピンヘッダ)を取り付けます。Pro Micro同梱のものではなく別のパーツを使用する理由は、何かあった際のPro Microのつけ外しを容易にするためだそうです。

コンスルーの穴の向きに注意しつつ取り付けます。

自作キーボード・Lily58 Pro:Pro Micro取り付け

キースイッチをはめ込む

トッププレートの四隅にスイッチをはめ込みます。

これを位置あわせに使い、トッププレートをPCBに取り付けていきます。

プレートの上からスイッチをソケットに差し込むのですが、これが思ったよりズレます。一気に取り付けようとするよりも対角線上から順に作業していくとやりやすいように感じました。

無理やりはめるとスイッチの足が折れかねないので、慎重に差し込んでいきます。

うまくトッププレートをつけられたら、真ん中からスイッチをパチパチはめていきます。ここまで来たらスムーズ。楽しくなってきます。

自作キーボード・Lily58 Pro:キースイッチ取り付け

全てのスイッチの取り付けが完了しました。
なんとなく左右対称にしてしまいましたが、silver軸のスイッチ後で位置を変更しています。

OLEDとプレート、キーキャップを取り付けて完成!

最後のはんだ付け工程です。

OLEDにピンを差し込み、はんだ付け。マスキングテープで斜めにならないように固定して作業します。

自作キーボード・Lily58 Pro:OLED取り付け

OLEDを差し込み、アクリルカバーボトムプレートを取り付け、キーキャップをはめ込んだら完成です!

初心者がセパレート式自作キーボード・Lily58 Pro を作ってみた
ホワイトで統一感のあるいい仕上がり。

ファームウェア書き込み

ガイドに沿って「lily58_rev1_via.hex」のファイルをダウンロードし、「QMK Toolbox」をインストールします。

自作キーボード・Lily58 Pro:QMK Toolbox

キーボードの片方を USB ケーブルでPCに接続したらQMK Toolboxを立ち上げ、「lily58_rev1_via.hex」を選択して、リセットスイッチをポチッと。

その後 Flash を押して書き込みを行い、「avrdude.exe done. Thank you.」と表示されたらOK。もう片方のキーボードもUSB ケーブルを繋ぎ、同様に書き込みを行います。

自作キーボード・Lily58 Pro:QMK Toolbox

QMK Toolbox:Pro Microへのファームウェア書き込み失敗

上記のファームウェア書き込みで何回か失敗しました。
どうやら、ファームウェアが書き込まれていない(まっさらな)Pro Microは初回の書き込みがうまくいかないことがあるようです。

対応を調べ、リセットスイッチの連打もしてみましたが解決せず。

色々試した結果、リセットスイッチを押した直後(ほぼ同時くらいのタイミング)にFlash を押すことで上手くいきました。

もし同様の事態で困っていたら参考にしてみてください。

接続確認

ファームウェア書き込みが完了したらMacの「キーボードビューア」を開き、キーの接続を確認します。

……。1箇所のキーが動作していません。泣く泣くスイッチとトッププレートを外して確認すると、ソケットの片足がはんだ付けされていませんでした。

簡単なミスだったので手間はさほどではありませんが、終わりが見えた段階で躓くと ”勘弁してくれ” 感が噴き出します。これが結構しんどかったので、テスターを用意しておけばストレスが少なく済んだな…と思いました。

キーマップを変更する

Macの使用に最適化するためにキーマップを変更します。

  • スペース・エンターの左右に英数・かなキーを配置
  • 左 Ctrl を Command⌘ に変更
  • 句読点を打ちやすいOLED下に配置

レイヤー機能はファンクションキーとテンキー、カーソルキーに加え、「」や → など、ブログを書くのに便利なキーを配置しました。

キーマップについてはいずれ個別で書きたいですね。


→書きました!

自作キーボード制作ににかかった費用と時間

キットLily58 Pro¥16,280
キースイッチ Kailh Speed Silver /Pink(60個)¥5,280
キーキャップNP PBT Blank KEYCAPS SET¥4,400
TRRSケーブルTRRSケーブル(白) 1m¥330
USBケーブルエレコム micro USB ケーブル 1.2m¥770

合計 ¥27,060 (税込)

+はんだごて・はんだが合わせて¥4000くらいです。

市販キーボードの最高峰と言われるREALFORCE やHHKBとほぼ変わらないくらいの価格帯になりました。

キーボード一個の値段として考えるとやはりお高いですが、”電子工作してる感”の楽しさと、自作の愛着、カスタマイズ性の高さを考えるとお得な気すらします。「沼」の入り口に立ってしまったのかもしれません。

組み立てにかかった時間は合計6時間半くらい
(はんだ付けと修正におよそ4時間、ファームウェア書き込みにトラブって2時間、あとはキーマップに30分ほど)

マニュアルがしっかりしていたので、初心者がググりながら作業した割にはスムーズだったように思います。

まとめ

細かなトラブルはありましたが、組み立て自体はとても楽しかったです!

キースイッチをSpeed軸にしたのは大正解でした。
とにかく軽い力で打てるので、カラムスタッガード配列なのもあいまって指の疲労が減った気がします。

Speed Pink軸(クリッキー)
クリック感はあるけれどCherryの青軸より圧倒的に静かで、軽いコチコチ音が心地よいです。

Speed Silver軸(リニア)
とにかく軽くて静か。感覚がなさすぎてつい底打ちしてしまいます。メインキーだとミスタイプ連発していた自信があるので、一部キーに限定してよかったです。

キーの位置感覚に慣れるのに少し時間がかかりましたが、タイピングソフトでの練習の甲斐あって1週間かからず普通に扱えるようになりました。

Lily 58 は公式のビルドガイドが親切ですし、組み立てについての情報も多い製品です。

細かいパーツが多いので根気は必要ですが、初心者でも調べながら作れば難なく完成させられるキットだと思います。

この記事が私と似た状況の方の参考になれば幸いです。

それでは!

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