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世にはいくつもの「論理配列」が存在するのをご存知でしょうか。
自作キーボード関連から当ブログにたどり着いた方には釈迦に説法ですが、論理配列とは、ざっくり言うとキーボードの押した位置と入力される文字の対応のこと。いわゆる普通の「左上からq,w,e,r……と並んだキー配列(QWERTY配列)」や、「JISのかな入力配列」なども論理配列の一種になります。
今日ではほとんどのキーボードが「QWERTY配列」を採用していますが、趣味界隈では効率を求めてそれ以外の配列も盛んに研究されています。
有名なものでは歴史の古い「Dvorak配列」や、入力効率についての文献が出ている「Colemak配列」などがあります。ただし、これらの配列は英語圏で開発されたもので、日本語の入力効率upにはあまり貢献しないようです。
日本語フレンドリーな論理配列としては、2017年にゆかり(@eucalyn_)さんの開発した「Eukaline配列」が発表されています。
Eukaline配列の特徴
本記事はこの「Eukaline配列」練習して、結果移行コストに負けて諦めるまでの経緯をまとめたものです。
結果として挫折に終わっていますが、これから論理配列を試したい方の参考になれば幸いです。
Eukaline配列では、以下のように「左手に母音とショートカット頻出キー」「右手に子音」が纏められています。
詳細についてはゆかりさんの記事をご覧ください。
個人的には①「か、さ、た、な」行が右手ホーム列にあるので日本語の語順に近い感覚で打鍵できる点と、②慣れたショートカットの動き(Ctrl + キー)が変わらない点に惹かれました。
ちなみに冒頭で紹介したように、Eukaline以外の論理配列も各所様々なものが提唱されています。
古いものではタイプライター登場からほど近い頃に生み出された「Dvorak配列(1930年代アメリカ)」、現代なら「Colemak配列(2006年アメリカ)」が有名です。
そのほか、英語圏では「qgmlwy」「MTGAP」「Uciea vanilla」、日本語圏では「Concordia」「Tomisuke」などがありますね。
このうち、特にColemak配列は、英文においてはQWERTYやDvorakよりも効率的にタイピングできると報告されているようです。
論理配列の存在を知ったとき、私はちょうど自作キーボードに手を出し、カラムスタッガードの格子状キー配置に慣れ始めた頃でした。
斜め方向から前後左右に変わった指の動きに馴染み、タイピングがしやすくなってきた時期です。指の動きの矯正という1ハードルを超えて楽になった指の動きを実感すると、「もっと効率的なタイピングがしたい」欲がもりもりと湧いてきました。
QWERTYは、実は結構不便な配列です。
特に日本語のローマ字タイプだと、無理な指角度でのキー連打(N,T)や同じ指の連続打鍵(ウ段、エ段)などが頻出します。指があっちこっち動くので、ホームポジションも崩れがちですしね。
そんな不便さや長時間タイピング時の疲労感が、論理配列を変更すれば改善しないだろうか……という思いから、ちょうど界隈で有名になっているEukaline配列に手を出した次第です。
論理配列に手を出すにあたり、Eukaline配列とメジャーな2つの論理配列を比較してみました。
個人的な所感ですが、日本語でのタイピング適正、QWERTY配列からの移行コストともに良さそうに感じます。
配列 | 特徴 | メリット | デメリット |
---|---|---|---|
Dvorak | 英文アルファベットの出現頻度に基づく設計 | ・英文入力に特化→the, in, (s)heなど打ちやすい ・左右交互打鍵 | ・移行コスト高い ・日本語「か、や」行が打ちにくい |
Colemak | QWERTYをベースにホーム行を英文に最適化 | ・英文ではDvorak, QWERTYより効率的 ・移行コスト低め | ・日本語で打ちにくい文字が多い |
Eukaline | 日本語入力に特化、ショートカットキー変更なし | ・ローマ字入力の効率化 ・左右交互打鍵 ・移行コスト低め | ・右手が忙しい? |
そして始まったEukalineライフなのですが、タイトルの通り、1週間ほどでギブアップする結果に。
ロウスタッガードからカラムスタッガードの自作キーボードに慣れるのが早かったのもあって「論理配列の変更も1-2ヶ月もあれば使いこなせるだろう」なんて考えていたのですが、思った以上に脳が混乱しました。
練習中、1日1回計測したe-typingスコアは以下の通りです。
Day1 | Day2 | Day3 | Day4 | Day5 | Day6 | Day7 | |
KPM | 58.48 | 72.54 | 118.10 | 122.57 | 151.43 | 138.86 | 146.58 |
正確率 (%) | 89.77 | 90.15 | 91.21 | 87.28 | 88.63 | 91.88 | 94.02 |
初めの3日ほどは結構順調で、徐々にタイピングがスムーズになっていく感覚が楽しかったのですが、実用的な文章を書こうとすると思考と指の動きがマッチせずミスタイプを連発。
予想外だったのは、練習を始めた直後よりも、多少慣れてスピードが出始めた頃が辛かったことです。
感覚で打ちやすい文字(母音、G,T,K,Bなど)と打ちにくい文字(S,N,Mなど)の差が大きく、勢いで打鍵しては誤字ることが増えました。
一番しんどかったのは5日目くらいだったと思います。スムーズに指を動かせば誤字。ミスを減らそうと慎重に打てば遅すぎてイライラ。練習後、QWERTYで文章を書いていたらEukalineの運指と混ざって困惑。
結局、QWERTYでのタイピングに影響が出てきたあたりで「まずい、仕事にならない……!!」と練習をストップしました。
左側のキーはQWERTYと共通部分が多い上、母音がホーム行にまとまっているため指移動が少なく、体感として左手はかなり楽になりました。
いっぽう負荷が大きいのが右手側で、QWERTYからの変更が多く、かつ指の移動回数が多いです。同じ指での連続打鍵は確かに減り、ホーム行使用率も増えたのですが、脳・指の負荷はそこまで変化していない印象がありました。
特に、慣れていないうちは「左手が担当していた負荷を右手に回した」ような感覚が大きいかもしれません。
その代わり、両手で交互に打鍵するリズム感はハマれば独特の楽しさがあります。ロングポール系のキースイッチや打鍵音のいいキーボードとの相性が良さそうです。
結果として習得前に諦める結果となってしまいましたが、Eukalineは独特な打鍵の楽しさがある論理配列でした。
私の場合、文章作成が仕事の大部分を占めているので、練習の途中でQWERTYと混ざって両方の配列が使えなくなってしまったのが致命的でしたが、練習を続けていれば2-3週間ほどで使えるようになっていたかもしれません。長期の連休など、まとまった練習時間を確保した状態でなら乗り越えられたかも。
特に、左手の負荷がQWERTYと比べて大幅に下がるので、左側にテンキーやマウスを置いている人は疲労感が分散されてちょうどいいかもしれません。
Eukaline配列は私以外にも様々な方がトライしている実績のある配列なので、論理配列に興味のある方の第一歩にも向いていると思います。ここからローマ字系論理配列に興味を持ったら、「Tomisuke配列」「Clandor配列」などに手を伸ばしてみるのもいいですね!
参考)
キー配列がQWERTYで統一されるまでの経緯は、以下の本がわかりやすくまとまっていました。
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