クロロホルムで人は本当に昏睡するの?

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クロロホルムで人は本当に昏睡するのか?

サスペンスものでよくあるこういうシーン。

「ハンカチにしみこませたクロロホルムで気絶させ、犯行に!」

創作物ではよく目にするシーンですが、 クロロホルムで本当にこんなことできるのか? という疑問について、今回は解説していきたいと思います。

目次

クロロホルムでヒトは簡単には気絶しない

結論から言うと、クロロホルムで昏睡するのはまず無理です。

薬品を吸い込んで意識をなくすためには、十分な量と濃度で肺を満たす必要があります。

ですが、クロロホルムはいわゆる吸入麻酔薬よりも肺に溜まりにくく、また刺さるような刺激臭があります。そのため、ハンカチに染み込む程度の量では激しく咳き込むだけで終わってしまうことでしょう。

場合によっては頭痛・吐き気に襲われることはありますが、意識を失うことはありません。

歴史上、クロロホルムで麻酔した事例はある

とはいっても、歴史的にはクロロホルムが医療用麻酔として使われていたこともあるにはあるのです。

時代としては、1800年代中盤ごろ。

1853年にビクトリア女王の無痛分娩に使用された記録が残っています。

論文:Anuesthesia, 1996, Volume 51, pages 955-957)

しかしもちろん、ミステリー作品のようにハンカチに染み込む量では全然足りません。また、内臓への毒性が強いので、量が十分でも肝臓の障害や腎不全、不整脈やなどで亡くなる可能性が大きく、麻酔薬としてはすぐに使われなくなりました

クロロホルムがサスペンスでよく使われるようになった理由

現実的には難しいのもかかわらず、クロロホルムでの意識消失が描かれるようになったのはなぜなのか?

推理小説の金字塔・シャーロックホームズシリーズで登場したことが理由のひとつでしょう。

作者であるコナン・ドイルは医師でもあったことで知られています。エジンバラ大学の医学部にいた頃、クロロホルムを麻酔として使っていた先生の講義を受けていたこともあるそうです。

当時では先端だった麻酔法を自分の小説に登場させたのでしょう。

それが現代まで、ある種の伝統・お約束として引き継がれてきたんですね。

まだリアリティがある薬品は「ジエチルエーテル」

小説や漫画など、有機溶媒で昏睡を狙うなら、クロロホルムよりもジエチルエーテル(通称エーテル)のほうが適しています。

エーテルは吸入麻酔としても使われていた有機溶媒。クロロホルムよりも安全域が大きいので、1800年代後半にはクロロホルムにとって代わり、エーテルを使った吸入麻酔が広まりました。

現在はさらに安全な吸入麻酔があるので日本では使われていませんが、現代でも、発展途上国の医薬品の乏しい地域で麻酔に使用される場合があるようです。実験室レベルでは、マウスの麻酔に使われることもありますね。

ただ、エーテルは沸点が34.6℃ととても低いので、すぐに揮発してなくなってしまいます。量もたくさん必要で、即効性もないので、サスペンスの犯行手段としては扱いが難しいところ。

やっぱり創作物のお手軽な昏睡はある種のファンタジーとして見る必要がありそうです。

おまけ・じつはクロロホルムの味はほんのり甘い

私は化学系のため、大学時代からクロロホルムを使った実験をよくしてきました。そのころに一度だけ、実験中にクロロホルムのしずくが口に入っちゃったことあるんですよね。

口に入った一瞬、ふわっと甘い味が広がって。あれ?と思ったのもつかの間、すぐに「これは駄目なやつだ」とすぐにわかるビリビリとした強い刺激がきたので念入りに口を濯いだ記憶があります。

絶対に真似してはいけませんが、何かの参考になれば。

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