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記憶を消してプレイしたいゲームを1つ選べ。
そう言われたら、私は間違いなく「十三機兵防衛圏」を挙げると思います。
「十三機兵防衛圏」は、突如日常を破壊した<怪獣> に抗うため、13人の少年少女が戦闘用大型ロボット<機兵> に乗って戦う物語。
令和の名作として名高い本作ですが、何よりの魅力はその壮大なストーリー。SF作品としても群像劇作品としても飛び抜けた完成度で、これ以上のシナリオの作品はちょっとすぐには名前があげられないほどです。
13人もいるメインキャラ、それぞれの物語が独立して芯が通っている。けれど彼らの関係性や思惑が複雑に絡みあっている。その裏側に存在するのは、世界観を構築するいくつもの謎。
ストーリーを進めるごとにそれらが少しずつ紐解かれていくのですが、「誰の物語を、どういう順序で進めるか」によって受ける印象が大きく変わるため、プレイヤーごとに唯一無二のプレイ体験が得られるのです。
考察しながら少しずつ物語を読み解いていくのが好きな人にはたまらない作品。
今回はそんな「十三機兵防衛圏」について、極力ネタバレを避けて紹介したいと思います。
十三機兵防衛圏は、「オーディンスフィア」などを手掛けたヴァニラウェアが開発し、2019年11月28日にアトラスから発売されたアドベンチャーゲーム。
初出はPS4ですが、2022年にSwitch版も発売されました。
の3つのモードからなるシステムで、基本的には「崩壊編」と「追想編」を交互に進めて物語を追っていきます。
「追想編」はキャラクターごとに異なる物語を読み進め、行動を選択していくアドベンチャーパート。
世界観や人間関係、時系列など、キャラクターによって明らかになる情報が違うので、『誰から、どの順序で話を進めていくのか』によって、ストーリー全体の見方がガラリと変わります。
各シナリオの雰囲気もまるで違ったものになっており、SF、ミステリー、ループもの、スパイアクション、焼きそばパン(焼きそばパン?)とバリエーション豊か。
それも、ただテイストを変えただけではなく、キャラごとに個別の主題が軸になって話が展開されていきます。
たとえば、パッケージ正面にいる主人公の一人・鞍部十郎。
鞍部十郎は、連日奇妙な夢を見ている。それは自身が荒れ果てた近未来都市で、クラスメートの冬坂五百里とともに破壊工作員として暗躍している姿だった。五百里も同じ夢を見ているけれど、展開が十郎のものとは異なるらしい。
そんなある日、保健室で見つけた「和泉」十郎と書かれたカルテ。包帯姿の先輩からも「和泉」と呼びかけられ、自分の記憶に違和感を覚え始める。
− 奇妙な夢と生活に悩むなか、十郎は突如街に出現した”機兵”に遭遇する
彼のシナリオでは、記憶にまつわる謎の解明が中心に物語が展開します。
いっぽう、冬坂五百里のシナリオはというと、こちらは一転してラブコメ調の味付け。
十郎の物語で触れられる「奇妙な夢」に関する内容が中心にありつつも、登校中に出会ったミステリアスな青年・関ヶ原瑛への片思いが大きく描かれています。
出会い頭の恋、放課後に友達と食べるクレープ。そんな女子高生らしさ満開の華やかな日常から切り離されるように迷い込んだ、夢で見た崩壊した近未来都市で、再びあの日出会った彼……関ヶ原瑛に出会う。
瑛の秘密に近づくにつれ、世界の根幹ともいえる大きな謎に巻き込まれていく。
シナリオ中一貫して、五百里の原動力は「彼のことがもっと知りたい」という思いです。
このように、直接関わりのあるキャラクーだけでも描かれ方が全く違っていて、群像劇としての広がりが段違いです。それぞれのストーリーが全く違う展開をしながらも、最後にはひとつの結末に収束していく。
▼画像は公式サイトから
各シナリオで出てきた情報の断片が噛み合って、「もしかしてこういうこと?!」と物語全体に隠された秘密が見えてきた時の感覚はたまりません。
とはいっても、一筋縄ではいかないのが「十三機兵」のすごいところ。
だいたいの予想はその直後に裏切られたり、さらなる謎が飛び出してきたり。しっかり最後の最後、全員の物語を100%まで進めないと全貌はわからないようになっています。
一人でも欠けるとわからない。98%でも不十分。作品によっては、ある程度進めた時点で「ああ、こういうことかな」と、答え合わせのような心境になることもある中、ここまで先を読ませない話作りは圧巻です。
設定資料集を読みましたが、世界観もシナリオも、本気で製作者の脳内が見てみたいレベルの複雑な構成でした。
「追想編」同様に物語の重要な位置を占めるのが「崩壊編」。
こちらはアドベンチャーパートの「追想編」から一転して、リアルタイムで進行するタワーディフェンス系のシミュレーションバトルです。
崩壊編では、13人の機兵搭乗者から最大6人を選んで、侵攻してくる敵から拠点「ターミナル」を防衛する戦いに挑みます。
戦闘難易度は序盤は低めで、終盤は物語の盛り上がりと共に厳しくなっていく丁度いい歯応え。
ある程度ゲーム慣れしている人なら難易度「NORMAL」がぴったり。
タワーディフェンス好きや、主人公たちの厳しい状況を追体験したい人は「STRONG」、バトルよりシナリオ重視で楽しみたい人は「CASUAL」がおすすめです。
「十三機兵」のストーリーは複数の時系列のできごとと、幾人ものキャラクターの思惑が交錯していて、かなり多層的なものとなっています。その重厚なストーリーを整理し補うのが、残るひとつのモード「究明編」です。
「究明編」は、一言でいえば情報アーカイブ。ゲーム中で登場した用語や物語についての情報を読むことができるモードです。
「Event Archive」では作中で起きた事件が時系列順に整理され、「Mystery Files」では登場した人物や小道具、用語についての詳細が記載されています。
過去の事件の詳細や、キャラクターごとの物語を読むだけでは微妙につながらなかった謎の最後の1ピースをプレイヤー自身で読み解いて、物語を整理していく。
この仕掛けこそが「十三機兵」の持つ独特のゲームプレイ体験、プレイヤーそれぞれにしか味わえないカタルシスにつながっています。
発売から4年が経った「十三機兵防衛圏」ですが、いまだに群像劇作品の完成度のとしてはトップクラスの名作。時間と空間、過去と未来、さまざまな人の思惑が交錯するシナリオは圧巻の一言です。
一つ難点を挙げると、ゲーム終盤の「崩壊編」で戦闘が激化した時の処理の重さがネックなのですが、それを差し引きしても大幅なおつりが出るくらい、唯一無二のゲーム体験が味わえます。
未プレイの方はぜひ、既にプレイ済みの方もこれを気にまた遊んでみてはいかがでしょうか。
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